家事動線は基本的に、短ければ短いほどスムーズであるとされています。
スペースの限られた狭小住宅でスムーズな家事を行うための間取りのポイントを3つご紹介します。
狭小住宅に限らずそうですが、バスルーム、トイレ、洗面所、キッチンなど、水を使う場所をできるだけ近い位置にまとめた間取りにするのが得策です。
単純によく使用する場所というだけでなく、主婦(主夫)の方が毎日のようにお掃除する部分でもあるからです。また、お料理の合間にお風呂のお湯を張ったり、小さなお子さんが一人でトイレや洗面所を使う時にもキッチンに居ながら様子をうかがうこともできます。
可能なら、水回りの動線が直線に近くなるような間取りにするとなお動きやすく、見通しやすくて良いでしょう。
さらに、水回りが集中していると新築時に水道管などの配管コストも圧縮できる場合が少なくありません。コスト削減という意味でも、水回りの設備はできるだけ近い場所にまとめましょう。
家事には、一連の動作を繋げることで完了するものが多々あります。
例えば、洗濯。洗濯ひとつとってみても、
1.洗濯物を洗う
2.干す
3.たたむ
4.しまう
このよう4つの動作が必要になります。
もし2階建ての住宅で、洗濯機は1階にあり干すのは2回のバルコニー、たたんだ洗濯物はまた1階のタンスへしまう・・・などの動線で動くとしたら、荷物を持って上下移動をすることが多くなってしまい、効率が悪いだけでなくムダな疲労も溜まってしまうでしょう。
狭小住宅の場合は3階建てが主流になっていますが、もしこれが3階建てであれば、なおさら大変です。
ですから、狭小住宅では家事の一連の流れに関係するポイントを可能な限り1フロアでまとめましょう。
洗濯物を2階で干すのであれば、洗濯機や衣類の収納スペースも2階にすると動線が2階に集約するので、動きやすくなるでしょう。
同じように、キッチンが1階ならばダイニングも1階、パントリーも1階にするといった風に、毎日のキッチン回りの家事に関係するポイントを1フロアへ集約することで、スムーズな家事動線になります。
ただでさえ余分なスペースはない狭小住宅です。家事をする時にしょっちゅう家族とすれ違ったりしていては、お互いに「なんか邪魔だな・・・」と思ってしまうかもしれません。
狭小住宅の間取りでは、家事動線と同時に生活動線も注意深く考慮しなくてはなりません。
できる限りこの2つの動線が重なったり交わったりすることが少なくなるような間取りにするのが賢明でしょう。
例えば、朝の身支度に家族皆が使う洗面台がキッチンで家事をしている方の後ろを通らなければたどり着けないところにあるのでは、効率的な動線とは言えません。また、火や包丁を使っている時に近くを家族が通るのは危険です。
狭小住宅で家族の生活動線と家事動線をできるだけ分けるには、ひとつの場所へたどり着くための扉や通路を複数設けておくという方法があります。
家族が普段使う扉・家事をする方が使う扉を分け、家事動線と生活動線を完全に分けることも可能になるでしょう。
ただし、扉などが多くなると建物の壁部分が減ることになります。それによって建物の強度を損なわないようにも注意しなければいけません。狭小住宅に強い住宅メーカーであれば、動線を考えた工夫をしつつも強度をおろそかにしない間取りを提案してくれるかもしれません。
狭小住宅は、狭さ故にどうしても動線が混雑しがちです。
しかし、自宅の動線が混乱していると、毎日の生活をスムーズに送ることができません。
快適に暮らしていくために押さえておきたい、動線のお悩みとそれを解決する施工事例をまとめました。
家事動線や生活動線を考えずに収納や間取りを決めた場合、家事や生活をするために家の中を何度も往復しなければならないという無駄が発生します。スペースの狭い狭小住宅で、何かしようとする度に住人が動き回らなければならない家は不便ですね。
例えば、階段の掃除をするとき、階段から遠いところに掃除用具の収納スペースがあると面倒な思いをすることになるでしょう。しかし、階段下のスペースや階段脇のスペースに掃除用具が収納してあれば、掃除したい時すぐに掃除できるので余計な手間がかかりません。
ハンディモップ等の軽くて持ち運びやすい掃除用具ならともかく、ある程度の大きさと重量のある掃除機などは、よく使う場所に収納すべきです。家中に小さな収納スペースがたくさんあれば、物をもってうろうろする無駄はなくなります。
ある事例では、通常の物件なら放置されがちな「階段下のデッドスペース」や「ちょっと高い位置にある隙間」を収納スペースにして問題を解決しました。
クローゼットなどの大きな収納も便利ですが、デッドスペースや構造上隙間があっても問題ない場所に小さな収納をたくさんつくると、家事を行う上で無駄な動きがなくなります。
画像引用元:渡辺ハウジング公式HP
www.e-iezukuri.biz/e691.html
敷地面積21坪の空間で3階建ての建物に仕上げた事例を紹介します。その中で特に食品庫(パントリー)をキッチンと同階(2階)に設置したのがポイント。飲食料品を階段を上って2階のキッチンに運ぶことは大変です。そこでしっかりとした手すり階段を設けると同時に、飲食料品を保存できる食品庫をキッチンの隣に設置。調理をする際に最低限の時間で対応することができる動線を構築しました。縦長の建築で起きる収納スペースと生活スペース間の距離の問題を中継保存庫の設置によって解消したケースです。
掃除や料理の便利グッズは沢山ありますが、洗濯に関してはまだまだ人力でやらなければならない工程が多いです。そのため、毎日の労力を考えるなら洗濯動線を重視した間取りにする必要があります。
理想は、すでに説明した通り「洗う、干す、たたむ、しまう」の4ステップすべてを同じ階で行える事がもっとも効率的でしょう。
ただ、広さに限りのある狭小住宅では、なかなか水回りの動線すべてを同じ階にまとめることができません。しかし、間取りを工夫すれば4ステップ中3ステップほどをまとめることは可能です。
とある事例では、2階建て住宅の1階にキッチンや浴室等の水回りをまとめることで、家事動線のほとんどを1階で完結できるようにしました。ポイントは、寝室等のスペースをすべて2階にしたこと。
洗濯に必要な4つの動作の内、「しまう」だけは別途行う必要があるものの、料理・洗濯・お風呂の準備といった家事動線をまとめることに成功しています。また、こちらの事例では玄関から奥の水回りまで、ひとつながりの空間にしているのもポイントです。
玄関とキッチン、キッチンとリビングスペースの部分に開閉式の間仕切りを設置することで、必要に応じて1階を1部屋から3部屋まで分割して使えるようにしています。
間口が狭いため、玄関を開けるとすぐにリビングという間取りになりやすい狭小住宅ですが、間仕切りを閉めれば玄関からリビング等の生活空間へ視線が通らないようにできるわけです。
壁ではなく開閉式の間仕切りにすることで、プライバシーを守りつつ、空間の奥行きも確保できています。また、間仕切りを開ければ玄関からキッチンまで移動を遮るものがありません。
食材等を大量に買いだめしたときも、玄関からキッチンまでスムーズに荷物を運んで収納できるため利便性が高いです。さらに、2階の一部、キッチンとつながる部分を吹き抜けにすることで、1階で料理ができたらその場で2階にいる家族に呼びかけができるようにもなっています。
狭小住宅では、スペースを確保するために2階建てや3階建ての住宅を建てるのが一般的ですが、階が違うと気軽に家族に呼びかけることができません。食事の支度ができたときにわざわざ2階に上がらなくてよいので、その分家事の負担も楽になるでしょう。
画像引用元:渡辺ハウジング公式HP
http://www.e-iezukuri.biz/e32.html
9坪の立地を最大限活かすため、上階を増やしたという事例です。動線を1階に集めつつ、収納スペースを確保する間取りに設計。この施工例では1階に洗面室や洗濯スペースを集めました。その生活空間を外から見えにくくするため、収納スペースを設置して、玄関から覗くことができない角部分を設計。1階に生活空間を集めることで、無駄のないスペース配置を実現したのです。9坪という狭さを感じさせない空間を確保しました。
忙しい主婦業をする上で、「料理と洗濯を同時進行したい」という需要は強いです。洗濯物を洗う洗面所と干すベランダ、キッチンが離れている間取りだと、料理と洗濯を同時に進めることは難しいでしょう。
そこで、こちらの事例では浴室や寝室を別の階にわけ、比較的利用時間が長いキッチンを中心に家事動線をまとめました。
住宅の1階には浴室と寝室を置き、2階にはキッチン・階段・洗面台を並べて設置。
キッチンそのものは階段をあがってもすぐに見えない位置にあるため、来客時も落ち着いて家事ができますし、キッチンと洗面所が近いので炊事と洗濯を同時に進めやすいです。また、2階には廊下をつくらず、ひとつのリビングで各空間をつなげています。
洗濯物を干すときは、洗面所から出てそのままリビングに行き、そこに入口があるベランダに出るだけでよいので、動線面の無駄もありません。もし、リビングを1階に設置すれば、玄関を開けても室内が見えないようにするために廊下を設ける必要があったでしょう。
しかし、生活空間であるリビングを2階に設置して廊下代わりに使うことで、同時に家事をする上での動きやすさも確保しているのです。
また、こちらの住宅は3階建てで、3階には子ども部屋と屋根裏収納、ルーフバルコニーがあります。普段使わない荷物を屋根裏スペースにまとめて収納しておけば、狭小住宅でも生活空間を圧迫せずに荷物を整理できるでしょう。ルーフバルコニーにコンセントと水道を設けているのもポイントです。
屋上で直接電化製品や水を使うことができるため、ルーフバルコニーの掃除やBBQ後の片付けといった雑事がしやすくなっています。また、ルーフバルコニーの近くに掃除用具を収納しておけば、掃除の手間も軽減できるでしょう。
画像引用元:渡辺ハウジング公式HP
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2階からベランダへ出られる間取りを要望して風通しのよいLDKを設計していただきました。リビングとキッチン、洗面化粧室を横並びにして、動線の円滑化を実現。9坪の空間を広く見せるため、無駄なスペースとなる廊下削除の提案を受けました。また、どの空間も並列しているため、ベランダへ移動することができるようにしていただきました。キッチンは階段の脇に組み込むよう設置して、目隠しできる間取りにプランニング。これにより、生活空間がより広く感じることができるようになりました。
狭小住宅でも、間取りを工夫すればフルビルトインタイプのガレージを設置できます。フルビルトインタイプのガレージを設置するメリットは、ガレージやガレージ脇のスペースに物を収納しておくことができる点です。
スペースの関係上、1階に居住空間をほとんど用意できないというデメリットもありますが、ベビーカーや冬用のコート、保存のきく食材用のパントリー等をガレージ周辺につくれば、買い物や病院等で外出する際の手間を省略できるのです。
フルビルトインのガレージなら、シャッター等を閉めれば外部と完全に隔離することができるため、保管物が盗難にあう心配もありません。
直接家事を楽にする間取りはないものの、玄関はほぼ毎日使う場所ですので、買い物帰りにそのままガレージのパントリースペースに食品を収納したり、室内では着用しないコートやダウンを玄関周りに置いたりすることで、生活の負担を軽くすることができるでしょう。
また、フルビルトインタイプのガレージなら、季節や時間に関係なく自宅で洗車ができます。車をこまめにメンテナンスしたい人には相応しい設備です。
ガレージの天井を高くして、余った空間に2階のキッチンやリビング、廊下からアクセスできる収納スペースをつくるという方法もあります。考え方次第でさまざまな活用法ができるので、動線を考えた間取りをつくるときは狭小住宅に強い住宅メーカーに相談してみましょう。
画像引用元:渡辺ハウジング公式HP
http://archi-hopes.co.jp/blog/gallery/201704stgknk/
「趣味の空間に住みたい」と考えていたため、その要望を伝えて、叶えていただいた家。1階のガレージと2階のLDKは吹き抜けを設けて、空間を隔てるものは一切ありません。その空間を柱と梁を剛接合することで、揺るぎない強度の骨組みを生み出す「SE構法」で施工していただきました。堅牢な耐震性と開放的な大空間を実現するだけにとどまらず、モダンでシンプルなデザインも見どころです。このビルドインタイプの空間を活用することにより、外出に車を使うときの車までの移動距離が格段に短くなります。またデザインにも力を入れており、色合いや見た目といった細かい注文も聞き入れてもらい、このガレージに活かしてもらうことができました。